COLUMN
2024.07.30
vol.560「描き続けること」
近藤 武弘(デザイン部)
絵を描く際に思うことは2つあります。「何を描く」か、「どう描く」か。「どう描く」かは技術的な要素も含まれるため、今回は割愛します。大切なのは、「何を描く」かです。
特段アカデミックな美術教育を受けていないので、これはただの思い込みや持論、そして自分を奮い立たせるための定義です。ですので、話半分で読んでいただければ十分です。
娘をモデルに描いたことは何度もありますが、最後に描いたのは2022年のことでした。娘は当時24歳で、ちなみに私は53歳でした。モデルは素材です。似せること(似顔絵にする)にはこだわりません。むしろ、24年間生きてきた人間の姿を内面から捉えることに注力します。だからこそ、赤の他人よりも絵の素材として娘は最適と言えます。とはいえ、似ていないのもモデルさんに失礼なので、それなりに気を使って仕上げますが。
絵は完成した時点で時間を刻むことを放棄し、静止します。永遠に。例えば10年経過し年を重ねても、絵の中の娘は24歳のままであり、現実の時間軸とのギャップは広がるばかりです。
この感覚、好きです。
機能的にはスナップ写真と同じです。10年前の写真は、10年前のままで時間が止まっています。だからこそ、人は懐かしさを含んだ様々な想いに浸ることができます。
私は「何を」描いているのでしょうか。娘を描いていながら、その時々の自分を投影させています。画面に登場することはありませんが、自分の生きてきた証を残すために。だから、余程の理由がない限り自作を手放すことはありません。そこに私の人生が詰まっているからです。(単に誰も欲しがらないとも言えますが…)
今年はいろいろあり、ほとんど絵筆を握っておりません。これはこれで、私の2024年を象徴しています。
「描き続けること」=「生きること」ずいぶん大袈裟に聞こえますが、自分の存在と意義を確かめるためにも、これからも描き続けていきたいと思っています。