COLUMN
2020.10.06
vol.373「認知容易性」
伊藤 貴生 (CS課企画)
認知容易性とは、わかりやすい、見やすい、シンプルであるなど、
認知しやすいものに好意を抱くという人の心理特性を表したものです。
簡単に言うと人は「慣れ親しんだものが好き」ということで、
この特性はデザインに関しても大きな影響があることなのですが、
このコロナ禍のもと、更にその重要性を増してきているように感じます。
コロナ禍の影響で、出かける時間が減り、
お店でゆっくりと買い物を楽しむ機会も減って、
ウェブでの買い物が増えました。
現状段々と外に出るようになってきてはいますが、
お店でものを買う場合、ユーザーはより安心安全な商品を
短時間で選び購入するようになっています。
そんな中、パッケージデザインについては、
いわゆる「定番のデザイン」が見直されています。
店舗での滞在時間を減らし、迷わず早く、的確に買い物をするために、
より簡単で、分かりやすく、繰り返し見たことがあるようなデザインが
ユーザーから信頼してもらえ、親しんでもらえ、快く感じてもらえます。
コモディティ化が進む日本の市場において、
競合との差別化を図るためにブランディングを行いますが、
あまりに突拍子もないデザインをし過ぎると、
差別化を図る以前に、比較検討対象から
はずされる恐れもあるのではないでしょうか。
尖って目立てばいいわけではなく、
「定番からはずれない」ことが大事になっていると感じます。
このコロナ禍の状況下において、あえて認知容易性に反して
個性やインパクトを追求したデザインでリスクを犯す必要は、
ないのかもしれません。
強迫観念のように、デザインするからには
個性がなければダメだと考える必要はなく、
シンプルで、端的に特長を打ち出した、
定番からはずれないデザインも心掛けたいです。
特にウェブデザインは、UIデザインの観点からも
よりプライム(先行刺激)の影響を受けがちなので、
そのような傾向が強いです。
市場で埋もれないようインパクトを出すべきなのか、
あまりにインパクトを重視しすぎて逆に敬遠されないような
定番のデザインを目指すのか、
明確にしてから進めるのが大切です。