COLUMN
2019.12.03
vol.335「追悼:イラストレーター和田誠さん」
森山 良二(デザイン部)
10月にイラストレーター・デザイナーの
和田誠さんが亡くなりました。非常に残念です。
「和田誠」と聞いても分からない方もいると
思います。映画監督までやってしまう多才な
方だったのですが、イラストレーターとしては
週刊文春の表紙が有名でしょうか。
あるいは料理愛好家の平野レミさんの旦那様として、
また長男がロックバンド「TRICERATOPS」の
リーダーであるということで知っている方も
いるかもしれません。
私にとっては、なんといっても本業である
イラストレーターおよびデザイナーとしての
仕事にとても感化されました。在学時期が
30年ほども違いますが、学校の先輩でもあります。
仕事の量からすると、イラストの仕事が
多いのかもしれませんが、デザイナーと
しても優秀で、たばこ「ハイライト」の
パッケージのコンペで採用されたり、
書籍のイラストの仕事の際、多くの場合で
装丁デザインも兼ねており、ユーモラスで
それでいて洗練された作風には憧れたものです。
先日、朱鷺メッセ内の県立万代島美術館で
「大正イマジュリィの世界」という
展覧会を見てきました。
大正時代の前後、およそ100年前の日本で
流行した、書籍の装丁やポスター、絵葉書
などのモダンなデザインを集めた展覧会
だったのですが、その中で重要な位置を
占める作家として、百貨店三越のポスターや
PR誌の仕事などで、日本のグラフィック
デザインの先駆といわれる
「杉浦非水(すぎうらひすい)」の作品も
多く展示されていました。
100年前にしてその洗練度合いに、
いつ見ても感心させられるのですが、
こういったエッセンスは、和田さんの
仕事にも受け継がれているような
気がしました。
実際和田さんの学生時代に、理事長をして
いた杉浦非水との接触もあった、という話
もあります。
あらてめて和田誠さんに哀悼の意を表します。
このようなこともありデザイナーとしての
原点を思い出させられた秋でした。