COLUMN
2024.11.20
vol.575「手触りのデザイン」
中尾 彩香(デザイン部)
私事ではありますが、今年の2月に関東から新潟へ移住しました。春夏があっという間に過ぎ、日増しに寒さが厳しくなるのを感じています。
関東から地方へ移住して生活するなかで一番の大きな変化は「買い物」です。
まず、移動手段が徒歩や電車から車中心へと変わりました。関東にいたころは駅まで歩くのが億劫で、通販やデリバリーに頼ることが多かったのですが、新潟では車で気軽にスーパーやショッピングモールにアクセスできます。そのうえ、荷物の大きさを心配することなく、一度にたくさんの買い物ができます。
関東では食材の買い出し一つでも往復30分歩いたり、満員電車に揺られるのが日常でした。それが車移動になったことで、生活は一変しました。夏場も炎天下をよぼよぼ歩くことがなくなり、毎年恒例だった夏バテを今年は回避できたことには心底感動しました。
さて、本題に戻ります。車移動が中心となり、ネット通販を使う頻度が減ったことで、実際に品物を手に取る機会が増えました。その結果、「手触り」が品物を選ぶ上でとても大きな基準になることを実感しています。
例えば、ドリップコーヒーのパッケージ。簡易的なビニール製のものは、スーパーでよく見かける手頃な商品に多い仕様です。しかし、コーティングされた和紙やクラフト紙といった奥行きのある手触りのパッケージになると、それだけで高級感や特別感を感じることがあります。大抵の場合、価格もそれなりに高くなりますが、手触りによって「値段に見合う品質」に思えるのです。
一方で、ネット通販では平坦な画像とテキストでしか情報が得られないため、値段や見た目だけで判断しがちです。しかし、手触りは消費者の視覚だけでなく触覚も刺激し、「美味しそう!」と感じさせる大切なデザイン要素だと思います。
もちろん、上質な素材を使えば良いというわけではなく、ターゲットや予算に応じた素材選びも重要です。そこに、手触りを活かした印刷やデザインが加わることで、商品の魅力がさらに引き立つのではないでしょうか。
これから買い物の際には、ぜひ「手触り」にも注目してみてください。新たな発見があるかもしれません。