COLUMN
2024.05.28
vol.551「見立番付」
伊藤 貴生(CS課企画)
「日本人はランキングが好きだ」と言われることが多いです。この傾向は、テレビのバラエティ番組、雑誌、ウェブニュースなど、様々なメディアで顕著に見られます。ランキングは、商品やサービスの人気が一目でわかるので、わかりやすい情報源とも言えるでしょう。かく言う私もランキング番組が好きです。なぜ日本人はこれほどランキングを好むのでしょうか?
理由の一つは、ランキングが情報の整理に役立つからです。日本の市場には多様な商品やサービスが溢れています。その中から自分に合ったものを選ぶのは容易ではありません。ランキングは、膨大な情報を分かりやすく整理し、比較検討するための指標を提供してくれます。例えば、人気のレストランランキングを見れば、どの店が評価されているのか一目で分かり、選択の手間が省けます。タイムパフォーマンスが重視される世相とも合っているのではないでしょうか。
またランキングはエンターテインメント性も高いです。テレビではランキングで特番が組まれることも多く、音楽番組やクイズ番組でもランキング形式で進行するものをよく見ます。順位を順番に発表していく流れが、次は何が来るのか気になることによって、番組を途中で離脱しにくくさせる効果もあるでしょう。ランキングは、家族で予想しながら見ることができるので、会話のきっかけにもなっています。
さらに、日本人の国民性もあるのではないでしょうか。ランキングは、他人との比較や社会的な評価を計る指標として非常に便利です。自分が上位だと予想した商品やサービスがランキングで高評価を受けていると、自信や満足感が得られます。また、今映画は何が見られているのか、音楽は何が聴かれているのか、飲食店はどこが人気があるのかなど、日頃から色々なジャンルの上位を把握しておくと世の中の常識から逸脱せずに済むと考えるかもしれません。
そこまで考えると、日本人のランキング好きはいつから始まったのか気になりました。
江戸時代中期に流行した「見立番付(みたてばんづけ)」をご存知でしょうか。
見立番付は、相撲の番付表に似た形式で、様々な物事をランキング形式で紹介するもので、現代のランキングの先駆けとも言えるユニークな文化でした。日本の山や川の番付から、名所や寺社仏閣、温泉地など、多くのジャンルにわたって作成され、民衆の娯楽となっていたようです。
日本人がランキングを好む理由は、その便利さや楽しさだけでなく、歴史的背景や国民性に根ざしたものでもあるのかもしれません。