COLUMN
2023.12.12
vol.528「クリスマスと安全色」
伊藤 貴生(CS課企画)
12月も半ばを迎え、クリスマスの雰囲気が一段と盛り上がっています。デザイン会社として、クリスマスに関連するデザインもするこの季節、実はとても気を付けなければならないことがあります。それは色覚の見え方です。
クリスマスにまつわるデザインでは、赤と緑の組み合わせが定番です。サンタクロースの赤とツリーの緑はクリスマスの象徴として親しまれています。しかしこの組み合わせには、色覚特性に障がいを持つ人々にとっての注意が必要なのです。赤と緑は、色覚特性に障がいがある人が見ると両方が鶯茶色に見えてしまいます。そのため、例えば緑の背景に赤い文字を使うと読みにくくなってしまうのです。
当社では、グラフィックデザインだけでなく、ウェブデザインにおいても、色覚に障がいがある方々が利用しやすいデザインを心がけています。なぜなら、色はデザインの中で重要な要素であり、全ての人が情報を簡単に理解できるようにするためには、色覚についての配慮が欠かせないからです。
色覚特性に障がいがある人は、意外と多く存在します。実際、日本の男性の20人に1人が色覚特性に障がいを持っていると言われています。
印刷物やウェブデザインにおいては、デザイナー側が独自にこの問題に対して制作段階で考慮していますが、国による色の規格も存在します。それが「安全色」です。安全色は、事故や災害を防止し、緊急事態に備えるための色の表示に関する規格です。信号機や道路標識の色などがその例で、安全に欠かせないものとなっています。
JIS安全色には、赤、黄赤(オレンジ)、黄、緑、青、赤紫の6色があるのですが、実はこれらの色は、視認性を高めるために2018年に改訂され、特に色覚に配慮した色合いに調整されました。
クリスマスに関してでも触れましたが、安全色の1つである緑色はこの2018年の改訂で、より黄味に寄って明るくなっています。1型・2型色覚の人々にとって、濃い緑色は灰色に感じられ、ロービジョンの人々には青との見分けが難しいからです。安全色の緑というと非常口の表示板が思い出されますが、2018年以降に造られたものは色が明るくなっていることに気づいた方もいらっしゃると思います。
世の中には多くの人が等しく情報を認識できる配色を用いたデザインが求められており、分かりやすいところで言うと鉄道の路線案内図などの情報の表示をはじめ、公共性が高く安全性に関わる分野を中心に見分けやすい配色やデザインの改善がなされています。
このような、色覚の多様性に配慮して、より多くの人に利用しやすい情報を提供する考え方を「カラーユニバーサルデザイン」と言います。デザインにおいては「カラーユニバーサルデザイン」はとても重要です。クリスマスの季節に限らず、日常のデザインにおいても、カラーユニバーサルデザインを意識して、全ての人にとって使いやすいデザインを意識したいと思います。