COLUMN
2021.07.13
vol.409「人を自然と動かす仕組み」
山際 直子 (デザイン部)
最近よく目にするようになったものでスーパーなど、
レジに並ぶ時の足跡マークがあります。
これはコロナ禍において、
人と人との距離を空けるために設置されたマークですが、
このようなものがあるとお店の人に言われなくとも
自然とその位置に立っていますよね。
このような
「小さなきっかけを与えて、より良い選択を自発的に取れるように促す」
方法を「ナッジ理論」と言います。
英語でナッジ(nudge)は「そっと後押しする」という意味です。
これは、行動経済学で用いられる理論の一つで
2017年にノーベル経済賞を受賞し世界的に広まりました。
サッカーW杯の時に話題となりましたが
渋谷の大混雑の中「DJポリス」が
「皆さんは12番目の選手。日本代表のような チームワークでゆっくり進んでください!」
という、やわらかくてユーモアのある言葉での誘導をしました。
このアナウンスにより、 ケガ人や大きなトラブルが起きなかったという件は
「ナッジ理論」の例として挙げられます。
この理論は、強制せずに、 自ら良い行動の選択を促す点がポイントです。
現在では、多くの企業がマーケティング戦略で
利用しているほかアメリカなど世界のいくつかの国では、
公共政策でも使われています。
この理論を生かしたデザインの具体例を挙げます。
・階段のペイントで、消費カロリーの目安などを表記したもの。
→ エスカレーターの渋滞緩和の目的
・バスケットゴールのデザインが施されたゴミ箱
→ ゴミ箱周辺のポイ捨てを減らす目的
・男性用小便器の的マーク
→ 飛び散り汚れを軽減させる目的
などがあります。
無意識のうちに良い行動ができる仕組みというのは
不思議な気持ちにもなりますが、
今の世の中にとても必要なものに感じます。
思わぬ場所で、このようなデザインが 人を動かしていると思います。
身の回りに存在する「ナッジ」を 探してみてはいかがでしょうか。